指示されなきゃ動けないのか、エビデンスが弱いからその企画は通せないなー、つまらない上司のセリフですが、最善のために指示もエビデンスもない行動をとった慈悲深く強い母親の話
「プラセボ効果って本人の思い込みで、現実問題の悩みが解決されることはない」
そう思っている人へ、自閉症の子を持つ親が小さな社会現象を起こしたセクレチンを取り巻く不思議な話
プラセボ効果の特徴の一つ、「プロセスの知識は不要」
子供というのは子供ながらに多くのことを考え、一個人として感情を持っていて、時には大人を感心させる。しかし小学生にも見たない子供が専門的な知識を持っているのは極めて稀です。ましてや現代でも有効な治療法が確立していない自閉症については大人でさえも知りません。
そして、プラセボ効果が起きる要因の一つで「信頼関係」がある、この世で最も美しい信頼関係の一つ母と子の間にある信頼関係がプラセボ効果が生じる症例は数多くあります。痛い痛いの飛んでいけーなどがそうですね。そして、対象となる本人ではなく第三者が「信じているもの」「思い込み」「信仰」「希望」がプラセボ効果を生じさせた話があります。
1人の母親の思い込みから始まる「親を泣かせた偽薬」
自閉症の親が抱える悩みに「わが子と意思疎通ができない」というのが挙げられます。他には小児自閉症でよく見られる胃腸障害によりオムツを外すことが出来ないと言ったものまで、プラセボ効果でその悩みが解決された事例をご紹介します。よく調べると1人の母親の思い込みから始まる
子育ては大変というのはこの世の摂理みたいなもので、子供を授かる事は幸せであり、見えないところは大変な事が多い、自閉症の子を持つ親が、そのことで不幸とは決して思わないが自閉症を持たない子の親では体験できない大変さがあります。
ニューハンプシャー州ベドフォードに住むビクトリアとゲイリーにはパーカーベッグという子供がいる。パーカー君は2歳数ヶ月頃から自閉症の典型的な兆候が現れる。1994.04,パーカー君が3歳の時、小児自閉症によく見られる胃腸障害による慢性的な下痢を起こしていた。
メリーランド大学の消化器専門医カロリィ・ホルバートにより内視鏡検査で診断を行ったが有益な情報はえられなかった。しかし、一夜にしてパーカーベッグ君の胃腸が良くなり、夜はよく寝るようになり、1年ぶりに「パパ、ママ」と意思疎通ができるようになる。(ここでもう泣ける)ビクトリアが病院を説得して調べると「セクレチン」が原因と確信する。その病院だけでなく国中の医者や研究者に改善した息子を記録した動画や手紙を送る。1996.11カリフォルニア大学アーバイン校精神薬理学助教ケネス・ソコルスキー(自閉症の息子アーロンを持つ)がそれを知り、アーロン君にパーカー君と同じ検査をして欲しいと地元の胃腸科専門医を説得、アーロン君も症状が改善して意思疎通ができるようになる。これに納得したホルバートは3人目にセクレチンを投与、3人目の小児自閉症の子も改善した。パーカー君に2回目の投与をするとビクトリアはさらに改善したという。
1998.ホルバートは医学雑誌に「彼らの行為が劇的に改善し、以前よりアイコンタクトを取り、意識レベルが上がり、表現言語の拡充が見られた」と報告。
ビクトリアの要望に対してホルバートはセクレチンが治療薬の許可がされていないことを懸念してこれ以上の投与を拒否した
ビクトリアは別の医師をみつけ、TVで取り上げられる、NBC「デートライン」で改善されたパーカー君の映像が放送されセクレチンを試した他の親の証言を紹介した。
「オムツが取れた」「コミュニケーションができるようになった」「ママ1年ぶりだねと言われた」など、番組によれば200名の子供のうち半数以上が良い反応を見せた。
アメリカで唯一、セクレチンの製造許可を持っていた「フェリング・ファーマシューティカルズ社」では2週間で在庫切れ、ネットで1回分のセクレチンが数千ドルで取引、ブラックマーケットにも市場が生まれた。2500人以上の子供のセクレチン成功談があった。
ノースカロライナ州アシュビルオルソンハフセンター小児科医エイドリアン・サンドラー(男性)「親が我が子にも同じ治療を、と電話ななりっぱなしだった、専門家は健康被害を懸念している、繰り返し投与する安全性もそもそも有効なのかも分からない」
国中の病院に10数件の臨床試験の緊急委託、サンドラーは60人の自閉症の子供の試験を担当した。
この試験は二重盲検法で臨床医、親、教師が評価、自閉症行動チェックリストという公式の基準で評価(痛みを伴う切り傷、打撲傷に、反応があるか〜ハグし返すか)尺度は0~158、数値が高いほど重症
サンドラーは1999.12「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」に論文を発表した、「合成ヒトセクレチンの単回投与は自閉症に効果のある治療ではない」二群に有意差はなかった。(Williams, et al., 2005)。Perry and Condillac(2003)は、セクレチン、フェンフルラミン、ナルトレキソンおよびアドレノコルチコトロフィン(ACTH)は、自閉症の子どもや未成年者にとって無効あるいは有害性が立証されている、と指摘している。
しかし、サンドラーは両群とも大きな改善があったことを認めている。
プラセボ群の平均スコア63、投与1ヶ月後の平均スコア45、約30%前後も改善していた。(ビクトリアやソコルスキーが感じたような改善が見られた子もいれば、なんの反応も見せない子もいた)
親の幻想ではない、本当に改善していたのである。タイトル回収だがプラセボ効果は確かに子供に起きた。しかしセクレチンは無関係だった。サンドラーは親達に「プラセボ以上のメリットはない」と伝えても69%の親はそれでも欲しがった。これにて、セクレチンが小児自閉症の薬になるというムーブメントはおわった。
小さな子供が自閉症を改善させる手法を知っている可能性はないと言い切っていい。大人も医師や研究者でさえ未だに答えを探している。しかし効果がないセクレチンで改善された事実の要因はなんだろう、母親の良くなってほしい期待が子供に伝わったのか、少なくとも自閉症を改善させたプロセスに子供に対する慈悲の親心と親の期待に応えたいという子心があった、という事も言い切っていい。
プラセボ効果が起きる時にはプロセスやエビデンス、統計データはいらない。事実さえも必要なく、むしろ必要なのは何故かは分からないけど「そうなるという自信」と「行動」、そして誰かの喜ぶ顔がみたいという穏やかな気持ちだ
今回の件から学ぶべき教訓
- 1.プラセボ効果には過去の一切は重要ではなく現在の行動と未来への期待が大切
- 2.こんなに立派に育ててくれてありがとう
自閉スペクトラム症は病気というよりも、持って生まれた「特有の性質」(特性)と考えるのがよいでしょう。特性自体を薬で治すことはできません。治療の基本は一人ひとりの特性に合わせた教育的方法を用いた支援で、これを「療育」(治療教育)といいます。療育を受けることで、生活の支障を少なくすることができます。ただし、興奮、パニック、自傷行為、攻撃性、不眠などがある場合には、対症療法的に薬物が処方されることがあります。
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